「また今日もダメだったか……。」
お風呂上がりに、ぬれたオムツを丸めながら、僕は深いため息をつきました。3歳になったばかりの息子は、トイトレ(トイレトレーニング)の真っ最中。でも、トイレのドアを開けることすら嫌がって、毎日逃げ回るばかりだったのです。
焦れば焦るほど、お互いにイライラしてしまう悪循環。そんな僕が、ある「小さな工夫」で、息子の目の色を変えることができた体験談をお話しします。
毎日繰り返される「トイレ嫌だ!」の嵐
当時のわが家は、まさにト育児の壁にぶつかっていました。保育園の先生からは「そろそろお兄ちゃんパンツに挑戦しましょうか」と言われるものの、家では全く進みません。
息子:「やだ! でない! おむつがいい!」
優しく声をかけても、息子はプレイルームの奥に逃げ込んで、おもちゃにしがみつきます。無理やり抱っこしてトイレに連れていこうものなら、「ギャーーー!」と火が付いたように大泣き。その声を聞くたびに、僕の心はズタズタに削られていきました。
周りの「もう外れたよ」に焦る僕の心
SNSを開けば、「2歳半でオムツ卒業しました!」というキラキラした投稿ばかりが目に入ります。ママ友やパパ友からも、「うちは勝手に行くようになったよ」なんて言われて、「どうしてうちの子だけできないんだろう」と、自分を責める日々が続きました。
オムツを替えるたびに、つい「なんで言ってくれないの?」と強い口調になってしまい、息子の悲しそうな顔を見ては「なんてダメな父親なんだ」と自己嫌悪に陥っていました。
100均で見つけた、1枚の「足跡シール」が奇跡を起こす
「このままじゃ、僕も息子もトイレが嫌いになってしまう。」
そう思った僕は、ノウハウを調べるのを一度やめました。そして、「どうやったらトイレが楽しい場所になるか」だけを考えることにしたのです。
そんなある日、100円ショップの文房具コーナーで、可愛い「ペンギンの足跡シール」が目に留まりました。これを見た瞬間、頭の中に一つのアイデアがひらめいたのです。
リビングの入り口から、廊下を通って、トイレの便座の目の前まで、この足跡シールをペタペタと貼っていく作戦です!
息子が寝静まった夜、僕はこっそり床にシールを貼りました。「喜んでくれるかな……」と、遠足の前の日のようにワクワクしながら眠りにつきました。
「パパ、これだれのあしあと?」息子の目が輝いた瞬間
翌朝、起きてきた息子は、リビングの床に貼られた青い足跡を見つけて立ち止まりました。「あれ? なにかある!」と目をキラキラさせています。
息子:「ぺんぎんさん! さがす!」
息子は、ペタ、ペタと足跡の上に自分の足を重ねながら、廊下を歩き始めました。その先にあるのは、いつもなら絶対に近づこうとしないトイレのドアです。
いつもは「絶対に開けない!」と怒るドアを、息子は自分から「トントン」と叩いて開けました。そして、便座の前まで続く足跡をたどり、自分から「よいしょ」と便座に座ったのです!
おしっこは出ませんでしたが、僕は嬉しくて、息子を思いきり抱きしめました。「座れたね! すごいじゃん!」と言うと、息子はとても誇らしそうな、見たこともない満面の笑みを浮かべていました。
焦るのをやめたら、トイトレは「遊び」に変わった
それからの息子は、驚くほど変わりました。朝起きるとすぐに「ペンギンさんちに行く!」と言って、嬉しそうに足跡をたどってトイレに向かうようになったのです。
あんなに重かったオムツ替えの時間が、今では「次はどの動物の足跡にする?」と親子で相談する、楽しい時間へと変わりました。
ネットに書いてある「正しい進め方」に縛られて、僕は息子の「楽しい」という気持ちを置き去りにしていたのだと気づかされました。焦らずに、子どもの目線になって一緒に面白がること。それが、僕たち親子にとっての、大切なトイトレの第一歩でした。