「お出かけしよう!」と声をかけた瞬間、私の心は少し重くなります。
なぜなら、2歳になる娘の「チャイルドシート拒否」が毎日のお決まりだったからです。
車に乗せようとした瞬間、娘の体はまるでカチコチの弓のように反り返ります。
終わりの見えない、真夏の車内での30分間
「絶対に座らない!」全身で拒否する娘
「いやあああ!のらないのおおお!」
娘の叫び声が、狭い車内に響き渡ります。私は汗だくになりながら、なんとかシートに座らせようとしますが、娘は足を突っ張り、お腹を突き出して抵抗します。
まるで、シートに針でも生えているかのような嫌がり方でした。
イライラしてしまう自分への自己嫌悪
「お願いだから座ってよ…」
ため息混じりに言う私の言葉は、娘には届きません。時計の針は無情にも進み、お出かけ前の準備だけで30分以上が経過していました。
「もう、今日はお出かけやめようか!」と、思わず強い口調で言ってしまったこともありました。車の中で二人きり、汗と涙でぐちゃぐちゃになりながら、私は深い自己嫌悪に陥っていました。
偶然生まれた「運転手ごっこ」という魔法
鍵を握りたがった娘の小さな手
ある日、いつものように激しく拒否され、私は半ば諦めて運転席に座り込みました。助手席のチャイルドシートの横で、大泣きしている娘。
その時、娘が私の持っていた車のスマートキーを指さしました。「これ、しゃわりたい(触りたい)」と、涙で濡れた目でじっと見つめています。
私はふとひらめき、「じゃあ、今日は◯◯ちゃんが運転手さんになってみる?」と声をかけてみました。
「しゅっぱつしんこう!」小さな運転席での奇跡
安全を確保した上で、娘を私の膝の上に乗せ、ハンドルを握らせてみました。
「ブブー!しゅっぱつしんこう!」
娘は一瞬で涙を止め、満面の笑みを浮かべました。そして、私が「次は、◯◯運転手さんの専用シートへ移動しますよ!」とチャイルドシートを指さすと、娘は「うん!」と嬉しそうにうなずいたのです。
自分から「カチャッ」とベルトを締めてくれるまで
「運転手さんのシートベルトは?」
チャイルドシートに座った娘に、「運転手さんは、シートベルトをしっかり締めないと出発できません!」と言ってみました。
すると、娘はいつもなら大嫌いなはずのベルトを、自分の小さな手で一生懸命引っ張ろうとしたのです。
私が最後のお手伝いをしてロックが留まると、娘は得意げな顔でピースを決めました。あの激しい抵抗が、まるで嘘のようでした。
お出かけ前の時間が、笑顔の時間に変わった
今では、車に乗る前に「今日はどこまで運転する?」と聞くのが、我が家の定番のルールです。
「こうえんまで、ゴーゴー!」と、嬉しそうにチャイルドシートに乗り込む娘。かつて車内で頭を抱えていたあの30分間は、今では楽しいおしゃべりの5分間に変わりました。
子どもの目線に少しだけお邪魔させてもらうことで、世界はこんなにも優しく変わるのだと、娘に教えてもらった大切な出来事です。