「今日もダメか……。お願いだから座ってくれ……!」
毎週末、車に乗るたびに、僕は心の中で叫んでいました。
娘をチャイルドシートに乗せようとした瞬間、全身をまるで鋼鉄のバネのようにピンと伸ばして「のけぞり大泣き」するのです。
体をエビのように反らせて激しく抵抗する娘を前に、僕と妻はいつも冷や汗だく。お出かけのスタートは、いつも最悪の空気から始まっていました。
3歳の娘を持つ、ドライブが大好きなパパです。かつては娘の「チャイルドシート拒否」に絶望し、車を手放そうかと本気で悩んでいました。
チャイルドシートに乗せると「のけぞって大泣き」する我が子。車でお出かけするのが本当に恐怖でした
全身をバネのように固くして拒否する娘
それは、娘が1歳半を過ぎたころから始まりました。
それまでは比較的おとなしく座ってくれていたのに、ある日を境に、チャイルドシートのベルトが見えただけで「ギャァァァーーー!」と火がついたように泣き叫ぶようになったのです。
「乗るよ〜、ほら、アンパンマンのお歌をかけようね〜」と、どれだけ優しく声をかけても効果はありません。
乗せようとすると、お尻を前に突き出して、背中を弓なりにのけぞらせます。こうなると、ベルトの金具を留めることなんて絶対に不可能です。
「なんでこんなに嫌がるの? パパとママと一緒に出かけるのが、そんなに嫌なのかな……」と、胸が締め付けられる思いでした。
泣き叫ぶ我が子を無理やり乗せる罪悪感と焦り
お出かけの時間は迫っているし、道路脇に停めた車の中でこれ以上時間をかけるわけにはいきません。
最後はいつも、泣き叫んで暴れる娘を、僕が力ずくでシートに押し込んで、無理やりベルトを締めていました。
車内に響き渡る娘の泣き声を聞きながら、運転席に乗り込む僕の心は罪悪感でいっぱいでした。
「周りの人に、虐待していると思われているんじゃないか……」
窓の外を通る人の視線が気になり、背中にはいつもじっとりとした嫌な冷や汗が流れていました。
ある夏の日に限界を迎え、試行錯誤をスタート
まず試したのは、お気に入りのおもちゃとYouTube作戦
「このままでは、せっかくの休日が台無しになってしまう」
そう思った僕は、あらゆる方法を試すことにしました。まずは定番の「おもちゃで気を引く作戦」です。
娘の好きなお人形や、音が鳴るおもちゃをチャイルドシートの周りに並べました。
しかし、娘はそれらを一瞬で床に投げ捨てて大泣き。
次に、スマートフォンの画面で大好きな幼児向け動画(YouTube)を見せてみました。
それでもダメ。根本的な原因は「車内のあの空気」だった?
おもちゃも動画も通用しない。
なぜ娘はここまでチャイルドシートを嫌がるのか、ある時、助手席の妻とじっくり話し合いました。
「もしかして、あのシートに座ると、ママの顔が見えなくなって寂しいのかな?」と妻が言いました。
確かに、チャイルドシートは後部座席にあり、前を向いて座る娘からは、運転する僕や助手席の妻の顔が直接見えづらい配置になっていました。
さらに、車内という「狭くて薄暗い、いつものお部屋とは違う空間」に、強い不安と孤独感を抱いていたのかもしれません。
ついに見つけた!車内を「退屈な空間」から「安心できる部屋」に変えた工夫
助手席のヘッドレストに、見慣れた「ママの写真」と「お気に入りの絵本」を吊るす
そこで僕は、ある「車内の工夫」を思いつきました。
娘から一番よく見える位置、つまり助手席のヘッドレストの後ろ側に、工夫を凝らすことにしたのです。
行った対策は以下の3つです。
- 1. 家族の笑顔の写真をラミネートして飾る
「いつでもパパとママが近くにいるよ」と伝えるため、旅行の時の特大笑顔の写真を吊るしました。 - 2. 自宅の壁に貼ってある「あいうえお表」の縮小版を貼る
いつも見慣れているお部屋の壁紙と同じ雰囲気を、車内にも作り出しました。 - 3. クリップ式の小さな鏡を取り付ける
鏡越しに、助手席のママといつでも目が合うように角度を調整しました。
車内を「拘束される嫌な場所」ではなく、「大好きなリビングの延長線上」にするための模様替えをしたのです。
まるで自分の部屋にいるかのような安心感が生まれた
この「車内の工夫」をしてから、初めてのお出かけの日。
いつものように娘を抱っこして、チャイルドシートに近づけました。
娘は一瞬、いつものように背中をこわばらせようとしました。
しかし、その時です。
助手席の裏に貼られた「ママとパパの写真」と「鏡に映るママの顔」が目に入ったのです。
「あ、ママ……!」と娘が小さな声で呟きました。
いつもなら大泣きしてエビ反りになる娘が、じーっと写真と鏡を見つめながら、ストンとシートにお尻を下ろしてくれたのです! その隙に素早くベルトを留めると、娘は泣くことなく、鏡に映るママに手を振っていました。
笑顔でドライブできるようになった今、思うこと
あの時の感動とホッとした気持ちは、今でも忘れられません。
娘にとっては、チャイルドシートが嫌いだったのではなく、「大好きなパパとママから切り離される孤独感」が何よりも怖かったのだと、ようやく気づくことができました。
車内を少し工夫して、安心できる空間にしてあげるだけで、あんなに頑なだった娘が、今では「車でお出かけするよー!」と言うと、自分から喜んで靴を履くようになりました。
もし今、チャイルドシートに乗せるたびに冷や汗を流し、泣き叫ぶ我が子に胸を痛めているパパやママがいたら、ぜひ試してみてください。
おもちゃを与えることよりも、「いつも通りの安心できる空間」を車内に作ってあげる。それが、僕たち家族を救ってくれた、一番の特効薬でした。