「パパとお風呂入る人ー?」
そう声をかけても、当時1歳半だった息子は僕と絶対に目を合わせようとしませんでした。
それどころか、お風呂場に連れていこうと抱っこした瞬間、まるで虐待されているかのような、この世の終わりみたいな大泣きが始まるのです。
「ギャアアア!イヤァァァ!」
近所中に響き渡るほどの声で泣き叫ぶ息子を抱えながら、僕はいつも「なんで僕のときだけこんなに泣くんだろう…」と、お風呂の床で一人、途方に暮れていました。
毎日が地獄。お風呂の扉が開いた瞬間に響き渡るギャン泣き
ママとは笑っているのに…
ママとお風呂に入るときは、楽しそうな笑い声がリビングまで聞こえてくるんです。
それなのに、僕が担当する日は、お風呂の扉を開けた瞬間から修羅場でした。
シャワーの音がするだけで、息子は僕の体に爪を立ててしがみつき、全力で逃げ出そうとします。
「僕、何か悪いことしたかな…?」「仕事で疲れて帰ってきて、この仕打ちは辛すぎる…」
お風呂に入れるだけで僕も息子も息が上がり、心も体もボロボロ。
湯船に浸かっても、息子は僕の胸にしがみついてガタガタ震えていました。
「お風呂、大嫌い!」という全身からの拒絶に、僕のライフは完全にゼロになっていました。
お風呂を「楽しい場所」にするために見つけた、ほんの少しの工夫
冷えた体に急な刺激はNGだった
ある日、仕事中も息子の泣き顔が頭から離れず、何が原因なのかを必死に考えました。
「僕の抱き方が痛いのかな?」「それとも、ママと僕でお風呂の入り方に何か違いがある?」
そこで、妻にお風呂での様子をそれとなく聞いてみると、ある「決定的な違い」に気づいたのです。
僕はいつも、お風呂場に入ったらすぐに冷えた体を温めるためにシャワーで頭や体を洗い、それから湯船に浸かっていました。
でも、ママは違ったのです。
「まずは湯船のふちに座らせて、おもちゃで遊びながら足だけお湯につけるよ」と。
さらに、僕が設定していたお湯の温度は、大人に合わせて少し熱めの「40度」。
「もしかして、冷え切った体に、いきなり熱いシャワーやお湯を浴びるのが怖かっただけじゃないか?」
目からウロコが落ちるような思いでした。
初めて笑顔で湯船に浸かってくれた、忘れられない夜
たった2つの変化で、笑顔のバスタイムへ
その日の夜、僕はさっそく作戦を実行しました。
まず、お湯の温度をいつもより低めの「38度」に設定。
お風呂の扉を開け、息子をすぐに洗うのではなく、まずは浴槽のふちに座らせました。
「ほら、お湯パシャパシャしようね」
そう言って、ぬるいお湯を足に少しずつかけてあげました。
すると、いつもなら「ギャアア!」と泣くはずの息子が、「おや?」という不思議そうな顔をして、パシャパシャとお湯を触り始めたのです。
そのまま、お気に入りのアヒルのオモチャを浮かべると、自分から湯船に手を伸ばしました。
ゆっくりと体を抱っこして湯船に入れてあげると、
「あうー!うふふ!」
と、これまでにない満面の笑みを浮かめてくれたのです。
その瞬間、張り詰めていた僕の肩の力が、一気に抜け落ちていきました。
子どもにとって「お風呂嫌い」の原因は、パパのことが嫌いなのではなく、単に「急な温度変化」に驚いていたことだったのです。入れる順番と温度を少し変えるだけで、世界はガラリと変わりました。
お風呂の中で、息子が僕の顔を見て、初めて「パパ、あったかいね」と笑いかけてくれたとき、嬉しくて涙が出そうになりました。
たったそれだけのことで、あんなに絶望していたお風呂の時間が、今では僕と息子の「一番大切な、幸せなふれあいの時間」に変わっています。